血液の中のブドウ糖の濃度(「血糖値」といいます)が高くなり、放っておくと種々の恐い合併症が起こってしまい生活の質(QOL)を下げてしまう病気です。
糖尿病のほとんどは生活習慣がかかわる「2型糖尿病」です。
これはもともとインスリン(膵臓から分泌される血糖値を下げるホルモン)分泌に問題がある体質をもっていることに加え、生活習慣の乱れ、運動不足、ストレスなどが加わることで発症することが多いようです。
糖尿病全体の2-5%をしめる「1型糖尿病」ではインスリンの産生工場である膵臓のベータ細胞に炎症が起こり、インスリンの分泌がゼロになってしまい、ずっとインスリン注射が必要となります。10歳未満の小児に生じる糖尿病はすべてこのタイプです。大人の糖尿病の中にも少数ですがこのタイプの方は存在します。
空腹時血糖値が200mg/dl以上にならないと特徴的な症状は出てきません。多くの方は無症状です。
空腹時血糖値が200mg/dl以上になると・・・
糖尿病合併症が進むと・・・
高血糖による症状はもちろんのこと、合併症による症状が出現します。
その合併症こそが生活の質(QOL)を落とし、場合によっては命にかかわることがあるのです
糖尿病の合併症には大きく分けて2つあります。
一つは糖尿病特有にみられる3大合併症、すなわち網膜症(眼の奥の病気)・神経障害・腎症であり、もう一つは動脈硬化症です。
細い血管の障害によって引き起こされます。
1)網膜症:失明の恐れも。
3)神経障害:
両側の手足の先に、しびれ・痛い・冷たい・ほてる・異和感などの症状が出てきます。特にしびれは要注意で、足に傷があっても気づかず壊疽の原因になることがあります。立ちくらみ、頑固な便秘・下痢、尿意がなくなる、発汗障害などの自律神経障害をみることもあります。
糖尿病があると動脈硬化の発症率は3~5倍に!
1)脳卒中:起こりやすいのは血管が詰まる脳梗塞
3)閉塞性動脈硬化症:
足の動脈に狭窄が生じて起こります。しびれや冷え、痛みで長時間続けて歩けないなどの症状があらわれます。進行すると足の切断が必要になる事もあります
糖尿病では、がん合併患者の死亡率は高い!!
糖尿病患者が新たに癌の診断を受けた場合、非糖尿病患者と比較して、全死因死亡リスクが高くなるとの研究論文が、米国医師会誌「JAMA」2008年12月17日号に掲載されました。
糖尿病は、がんの危険因子である!!
第63回日本癌学会(福岡市)において愛知県がんセンター研究所から日本人での多数例の成績が発表されました。現在、糖尿病を有している人、あるいは糖尿病の既往を有する人は、糖尿病を有していない人よりもがんになる危険率が1.4倍になることがわかりました。
なかでも肺がん(男性:1.5倍、女性:1.6倍)、肝がん(男性:2.2倍、女性:2.3倍)、咽頭がん(男性:2.3倍)、食道がん(男性:1.7倍)、膵がん(男性:2.3倍)、大腸がん(男性:1.3倍)、胃がん(女性:1.7倍)、子宮頸癌がん(1.9倍)で有意に高くみられました。
血糖コントロールの評価は、血糖値(空腹時または食後2時間値)と、HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)値を用いて評価します。HbA1c とは、過去1~2か月の血糖コントロールの指標です。
HbA1c値 7%未満を維持できれば合併症はでにくいですが、HbA1c値 8%(NGSP値)以上の状態が続くと合併症が出る可能性が非常に高くなります。
※HbA1cは、30を足すと体温になると覚えてください。つまり、36度未満は低い、36度台は平熱、37度台は微熱、38度を超えると高熱と考えれば覚えやすいですね。
目標 | 優 | 良 | 可 | 不可 |
HbA1c | 6%未満 | 6~6.9% | 7~7.9% | 8%以上 |
糖尿病の治療の3本柱は「食事療法」「運動療法」「薬物療法」です。
食事7割、運動2割、薬1割といわれ、決して薬のみで糖尿病が改善するわけではありません!!
「3食をしっかり食べ、間食をしない!」これが基本です。
次に、以下の5項目の食品を控えめにしてみましょう!!
ここでいう運動とは、スポーツのことではありません。家で寝ている、座っている以外は、すべて運動と考えます。自動車の普及と糖尿病の増加がきれいに相関していますし、テレビを見る時間が長い人ほど糖尿病の発症率が高いこともわかっています。
したがって、こまめにからだを動かすように意識することが大切です。
★まずは歩数計を持ちましょう。
歩数計を持つだけで、1日平均2500歩も歩数が増えるといわれています。
「いつでも、どこでも、一人でも」できる運動である歩行が最適です。
できれば、1日8,000~10,000歩を目標にしましょう。
そして、必ずしも「まとめて」歩行する必要はありません。歩行で通勤する、家事をする、ウインドウショッピングをする、散歩するなどこまめに動いて、トータルで一日の歩数を見るようにします。
またかならずしも体重は減らなくてもかまいません。体を動かすことで血糖値は必ずさがります。
食事療法や運動療法で血糖コントロールがうまくいかない場合や、インスリンの分泌が枯渇している場合などに対して行われるのが、薬物療法です。一般的には、経口血糖降下薬(のみ薬)とインスリン注射の二つがあり、患者さんに応じて使い分けをしていきます。
薬の作用点により、数種類の経口血糖降下薬が用いられるようになりました。このことは、患者さんの病態に応じて薬が使い分けできるようになり、より細やかな治療が可能となったことを意味します。作用点により以下のように分類することができます。